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推奨次世代産業(ハキリアリ編)

南アメリカに棲んでいる「ハキリアリ」と呼ばれるアリの仲間です。
ハキリアリの巣の中は、まるで都市のようでそこには200万匹を超えるハキリアリが棲んでいます。巣を作るために掘り出す土は、なんと40トンにもなるといわれています。

ハキリアリは地下の巣のなかに「菌園」と呼ばれるキノコの農場を持っています。巣のおくにあるキノコ畑では、働きアリが特殊なキノコを植えつけ、食糧にするために育てています。このキノコを育てるために必要な植物の葉が集められ、キノコの苗床にするためにパルプ状になるまで細かく噛み砕かれます。土のなかは高温多湿でキノコ栽培には最高の環境にあります。

そして、ハキリアリはキノコを病原体から守るために抗生物質を利用しています。キノコ畑を侵すのは「エスコボプシス」と呼ばれる病原体で、この病原体をおさえることができる抗生物質を作る特殊な細菌をキノコ畑で培養しています。

ハキリアリは5000万年も前から抗生物質を利用してきたわけです。人類が抗生物質を発見したのがわずか50年前のことです。もっとスゴイのは、ハキリアリは同じ抗生物質を5000万年も使っているのに、いまだに効果があるということです。人間が開発した抗生物質は、すぐに耐性菌が出てきて効果がなくなってしまいます。このあたり人間が抽出合成した抗生物質は、その過程でどこかに重要な物質を見逃しているように思えます。

また、キノコの生産が過剰にならぬよう、その成長を程よいところで抑えるための化学的な物質まで体内から分泌するというのですから、ちょっとビックリです。

さらには、ハキリアリはキノコ農園だけでなく牧場も経営しています。といっても、勿論ウシやブタを飼っているわけではありません。飼っているのはアブラムシ(別名:アリマキ)です。アブラムシは植物の汁を吸って、その一部を体の外に分泌します。アブラムシが分泌する汁は、糖分が含まれてとても甘いので、ハキリアリにとって大好物なのです。
これだけの関係なら単なる共生ということに過ぎませんが、ハキリアリはアブラムシを天敵から守るために、アブラムシの卵を自分たちの巣のなかに持ち込んで世話をするのです。そして育てたアブラムシを植物にもどします。
ここまでくると放牧のようなものです。アブラムシは、ハキリアリにとって立派な家畜ということになります。

ハキリアリの巣の近くには、こんもりとした赤土の山があるのですが、その砂を触ってみると実にサラサラしていて、まるで砂のようです。実はこの土のかたまりは、キノコを栽培したあとに不要になった土や葉などのゴミをハキリアリが巣の外に運び出したものですが、驚くべきことは、土の山を築くにあたり、いったん近くの木の上に登り、適当な枝や大きな葉を滑り台のように利用して、土を下に落としていくということです。これよって土山はきれいな円錐形になっていくのです。
つまり道具として彼らが木の枝や葉を滑り台を利用し、きれいな円錐形の山を築いていくということです。

自然界には、まだまだ私達の知らないことが沢山。生命誕生以来の長い間、育まれてきたのですから、人類を含めた自然に逆らわない貴重な財産が、まだまだあると思います。


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